食と命の教室 糀作りに味噌作り

毎月開催している「食と命の教室」。

残すところあと2回ですが、今月は「味噌作り」がメインです。
普通、味噌といえば寒仕込みといって1月~2月ぐらいが時期なのですが、高柳さんはこの時期にやるそうです。

というのも、10月17日は神嘗祭といって、神様に五穀豊穣の感謝を表す儀式があって、必ずこの日に農村では甘酒を神様に奉納してきたんですね。
なので、高柳家でも10月頭には糀を作るのが通例となっていて、ついでに味噌を作るそうです。

それ以外にも、今月の食と命の教室は、とっても充実していました


まずは6月に六本木で開催された「米展」で使われたDVDをみんなで見ました。

米展というのは、三宅一世さんなどを中心に「このままで日本の文化が廃れてしまう。何とかしないと」ということで開催されているイベントで、今年は「米」にテーマを当て、高柳さんや寺田本家さんなど全国の米にまつわる人達が取材され、映像化されて流されていたのです。

そのDVDが届いた、ということでみんなで見ました。

そしたら、きれいな映像、BGMの中で、しびれるようなお話がたくさん

冒頭一発目から高柳さんが出てきて

「私たちは今、歴史の途中を生きている。そして命を繋いできたのがお米。先祖から受け取った田畑を次の世代に渡すのに、もらった時よりもちょっとでもいい状態で渡したいと思うんだけど、なかなかそれが難しいんだ」

といったトークが、1フレーズ、1フレーズ区切られて、印象的な映像と共に流れてくるのです。

私も含め、何人もウルウルしていました

高柳さんだけでなく、能登のお米の神様の舞をしている方のお話や新潟で和紙を作っている方など、かつての日本人が「生きること」=「生活文化」というのを体現している、見事な暮らしぶりや行事が表されていました。

昔は、生きることの中に仕事があって、その中でも日本人は1つ1つに神様を見出し、神様や自然に感謝し、自然を支配しようとするのではなく、自然に沿って生きてきたという生活文化がアリアリと映し出されていました。

そして参加した全員が「このDVD買って、みんなに見せたい」というほどでした。

実際、来月、買えるそうなので、私も買いますよ


さて、DVDを見た後は、10月17日に高柳家で行った「神嘗祭」の真似事をみんなでやりました。

高柳家では、全部で7つの神様を祀っています。お正月も御餅を7箇所に供えています。
仏壇、神棚、大黒さま、えびす様には、ご飯を炊いた時にはまずお供えして、そのあとに自分達が頂くということを昔から続けています。

そんなお話を聞いたり生活習慣を聞くと日本人として襟を正さねば、という思いが沸きますね


さて、いったん部屋に戻り、先ほどお供えした甘酒を、私達も頂きます
これが高柳家の甘酒。
1口目は薄いかな?と思うのですが、2口、3口と飲んでいると甘みが口中に広がります。



甘酒を頂き、美味しいお昼ご飯を食べた後、いよいよ味噌作りです


味噌用の糀は既に作ってあり、塩と混ぜてあります。

ただ、次の仕込みのために糀を丁度作る所だったので、まずは糀作りから参加させてもらいました


糀は蒸したお米に糀菌をまぶして、温めて作ります。

まず、固めに蒸したお米をムシロの上に敷いた布の上に広げます。


これをみんなでほぐします。塊があると麹菌がきちんと混ざらなくてムラが出てしまうためです。


ちなみにご飯はこんな感じ。固めなのですが噛むと甘みがある炊き方ですね


次にご飯を一部取り出して、糀菌をまぶした種を作ります。


少し緑がかっているんですね~。


これをよ~く混ぜます。


そして出来上がった種を、残りのご飯に満遍なく振り掛けていきます。


あとはよ~く混ぜます。



混ぜ終わったら、下に敷いている布で包むように丸めて


その下のムシロを折りたたむようにして包みます。


更に包みます。


更に重ねます。


更に重ねて保温完了です。
これで3日間寝かしたら糀の完成です


なお、翌日顔を出したら、お母さんが糀のお世話をする場面に立ち会うことが出来ました。
1日経っただけで、もう完全に糀になっていてびっくり
それを丁寧に手で崩してパラパラにし、整えていましたよ。


さて、それでは味噌作りの開始です

味噌作りはいたってシンプルです。

煮た大豆と糀と塩を混ぜて、つぶして1年保管すれば出来上がり、というもの。

ただ「手前味噌」という名前があるとおり、同じ材料で作っても、保管場所が違うと味や風味や色合いが全く変わるから不思議です。

また、作り方も人それぞれなので、色々なやり方があるんですよ。


ちなみに大豆を煮ているのは、無着成恭さんのお孫さん。
数ヶ月前に修行から戻って、最近はほぼ毎日高柳さんのところにきているそうです。


お豆はいい感じで煮あがっています。高柳家の小糸在来を使っています。
食べると美味しい~



こちらが「枯らした」糀。
糀に塩をまぶして保管しておくと、発酵がとまり、塩がなじんできます。これを「枯らす」というそうです。
緑がかっていて、匂いも独特です。


これと煮あがって水切りして少し冷ました大豆を混ぜます。


ここでびっくりしたのは、普通は、大きな容器で混ぜ合わせてからミンチをするのですが、高柳さんは、なんとミンチの中に、直接大豆と糀を入れて、混ぜ合わせながらミンチするのです



さすがに、これにはびっくりしました。色々なやり方があるんですね~。

で、出てきたのをお母さんが空気が入らないようペタペタしながら樽に入れていきます。



そしてみなさん持参のタッパーに寄せ分けます。
来年、みんなで持ち寄れば、今日同じ材料を詰めたのに、それぞれ違った味になるんですよ



さて、味噌作りが終わった後は、小糸在来の枝豆を収穫して、すぐに塩茹で。
むっちゃくちゃ美味しかった



その後、お酒が登場しながら、お話の時間。

DVDや私が高柳さんに「高柳さんが子供の頃の暮らし」について語って欲しい、というオファーをしていたので、それを受けて色々お話を頂きました。


議事録から抜粋するとこんな感じ。

・私達の時代は、家族が協力して暮らしていました。生活と仕事が一緒で、親が忙しければ子供は「風呂を焚け」「牛のエサをやれ」といったことを言われるのですが、そういう時代を生きてきました。家族が協力するのが当たり前。当時は面倒臭かったですが、今になって良かったな~と思います。子供が大人になるには良かったな~と。例えば、田植えがあると大人を子供が手伝うわけです。苗を投げたり、あるいは大人が5列のところ3列植える。やっていくうちに差が出るから、半人前という意味が分かったわけです。大人が1反出来るのを半分しか出来ない。それが出来るようになってくると認められるようになる。そういうのがわかった。今はそういうことがわからないでしょ?


・村も縁があった。村の共同体が生きていた。例えば田んぼは、水を入れる時にみんなで入れないと入れっぱくれちゃう。だから遅いと早いところが遅いところを手伝いにくるんです。遅い方は手伝われると申し訳ないから、早くやろうとする。そうやってみんなで終わらせようとするのがあった。病人が出たら助け合うというのがあったんです。

・おあばさんに「何が働いて大変だったか?」と尋ねたことがあるんです。そうしたら「とにかく、我が家は家族が多かったので、4世代10人以上いたので、1年間安心出来るお米は30表必要だったそうで、30表あれば家族がどうにでもなる、そのために頑張ったんだよ」と言っていました。お金じゃなかったんですよね。


・自然が人間を生かしてくれる。田んぼは誰か人のものじゃないんだよ。誰か先祖が作ったんだ。誰かが開墾してくれたからということを忘れちゃいけないよ。わたしたちの歴史は途中で、そういうのを受け取って、誰かに渡していく。そのことを自覚して生きるというのはまた違うよ。ただ知っているというのとわかるというのは違う。

・もう1つお話しておきたいのは、子供の頃は遊ぶ場所は自然だったんです。泳ぎ、今は水泳と言いますが、私達の頃は泳ぎといったな。その泳ぎを覚えたのは皮。先輩に突き落とされて覚える。怖いですよ。でも怖くても先輩が先に待っていてくれる。頑固だけどしっかりフォローしてくれたんです。
食べ物も自分で確保したな~。食い物の無い時代ですから。
春は野いちご、わらび、夏は魚をザルやバケツを持っていって捕まえたな~。ザリガニ、ドジョウ、フナ、川カニ、うなぎを捕って、グツグツ煮て食べていた。それが面白かったな~。カエルも食ったよ(笑)切って、煮て、醤油で煮て食べた(笑)
秋はアケビ採り、山栗。柿は村に一杯あったから、遊びだから「あの家の柿を採ろう!」と。だから、あの家の柿は渋いぞ、あそこの家のは甘いぞ、というのがわかっていた。怒られると「さあ、逃げろ!」って(笑)
何が食べられて、何が食べられないかわかっていた。


人は厳しさ、大変とかは言葉じゃわからないでしょ?体験して初めて、厳しかった、つらかった、あったかかった、というのがわかるものですよね。そういったのを自然から学んだな~。


・・・などなど、色々なお話を伺いました。


今もまだ日本には、先祖から受け継いできたものを自分は途中で預かっているだけで、次にそのまま、あるいは少しでも良くして渡そうと考えている人がいること。自分のものは何も無いということを自覚して生きている人がいるんだな~、と改めて高柳さんとのご縁に心から感謝しました

日本の生活文化、日本人生き方って、本当に素晴らしいな~。


今回は、しょっぱなのDVDでみんなのスイッチが入ってしまったのと、後半のお酒でエンドレスになりそうだったので、私は送迎が必要な人を駅まで送るために退席。

最後までいたひとは22時ぐらいまで飲み語り合い、1人はお泊りしたそうです

でも、それだけ見ず知らずだった大人が集まって、人生や生き方を熱く語り合える場って、なかなかないですよね。

食と命の教室、やっていてよかったな~と思いました
これも高柳さんのおかげです。有難うございます。感謝感謝

次回は最終回で、前年度大人気だった「稲ワラ納豆作り」です。

既に結構申込が入っていますが、もし関心がある人は、是非ご参加下さい
食と命の教室は→ホームページから


その後、根本さんのところにお米を取りにいきました。
すると、山登り用(?)のライトを頭につけていました。恐らく、真っ暗になっても、そば刈りとかやっていたのでしょうね
お疲れ様です。


乾燥箱いっぱいのそばです。これが美味しいそばになります


今度の(土)(日)は根本さんとの「田んぼと畑の耕育教室」です。

餅をついて食べ、天日干し米の釜炊きご飯を食べ、サツマイモや丹波黒大豆の枝豆を収穫するなど、むっちゃくちゃ盛り沢山の「収穫祭」です

今度の週末も、みんなが楽しめるようがんばるぞ~





といったお話を聞かせてくれました。