根本さんの「米作り、人作り、地域作り」物語

 

■一途な思いを現実に

天日干しの風景やお米は希少になりました
天日干しの風景やお米は希少になりました

成田市東部のJR滑河駅周辺は、平成18年の市長村合併以前は「下総町(しもうさまち)」と呼ばれていました。この辺りは、利根川からの用水を源に古くから今に至るまで米作りがとても盛んな地域です。

 

この旧下総町の小浮(こぶけ)という集落に住み、現在、合計8町歩(約24,000坪≒東京ドーム1.7個分)の田畑で米や大豆を作るだけでなく、長い間廃れてしまった神楽(かぐら)を復活させたり小学校の田植え教室の講師をするなど、地元の伝統文化や子供が育つ環境作りを「使命」として心身を傾けている農家さんがいます。それが根本さんです。

 

根本さんは1966年生まれの農家の4代目。小浮地区にある47戸の中で農家は40人いますが平均年齢は67歳で、若手の専業農家は根本さんだけです。農業で生計を立てるのは非常に難しく、跡継ぎがほとんどいないためです。(2013年現在)

 

実際、根本さんは幼少の頃から農作業を手伝っていましたが、お父さんからは「百姓はやめておけ」「百姓は儲からないぞ」と事あるごとに言われていました。そして、根本さんが中学生になった頃に、お父さんは農家をやめてしまいました。

 

そんな環境であっても、根本さんは「農家になる」という思いが無くなることはありませんでした。しかし、やる気はあっても、経済的に自立できる農業経営をどう実現すればよいかはわかりませんでした。

 

農業高校に入った後も、今後のことを模索していました。そんな時、先生が稲ワラを牛のエサにし牛糞を田んぼの堆肥(たいひ)にするという「循環型の水田酪農」を勧めてくれました。「これなら地域でまとまってやっていける農家になれるかもしれない!」根本さんは先生のアドバイスに従って、水田酪農を学ぶことにし、まずは北海道の酪農研修に行きました。

 

この農法に可能性を感じた根本さんは、農業高校を卒業した後も、千葉県の畜産センターや白子にある牧場で勉強を続けました。また、カナダのある酪農家が研修生を受け入れていることを知ると、思い切ってカナダに渡りました。そこで1年間学んだ後、更にアメリカでも1年働き、合計5年間、様々な場所で多くのことを学んでから地元に戻ってきたのです。

 

しかし、いくら勉強したからといっても、農家としてすぐに成り立つとほど現実は甘くありませんでした。高価な農作業機械を一から揃えなくてはなりませんし、普通にお米を市場に卸しても生計は成り立ちません。そのため会社勤めをしたり、3交代の工場で夜間に働いた後に日中は睡眠時間を削って隣町の農家を手伝う、といったような生活を10年以上続けてきました。

 

田んぼは日本が誇る美しい風景です
田んぼは日本が誇る美しい風景です

そんな年月を過ごしてきて平成16年のある日、手伝いをしてきた農家さんが法人化して販売量を増やしていくことになりました。そのため、根本さんのお米をある程度の価格で買い取ってくれることになったのです。「自分のお米が販売できる!」専業農家になりたくとも通常の市場などへの卸ではとてもやっていけなかった根本さんにとっては、まさに千載一遇のチャンスでした。

 

すぐに決意し、お父さんに「専業農家になる」ことを伝えました。それまで夜は工場で働き日中は田んぼの手伝い、というハードな生活を送ってきた息子を見てきたためか、ずっと農家になることを反対してきたお父さんが、この時には「農家になるな」とは言わなかったそうです。

 

翌年、人に貸していた根本家の2町歩(約6,000坪)の田んぼを返してもらい、ついに自分の田んぼを始めました。幼少の頃からあきらめなかった「農家になる」という思いが、30代後半になってようやく実現したのです。

 

実際、幼少の頃からずっと農作業に従事してきた根本さんにとっては、お米作りはお手の物でした。水を得た魚のようにお米を作り始めた根本さん。その活動ぶりをみて、周りからも「うちの田んぼ、やらないか?」という声が次々とかかりました。機会があれば田んぼを増やしてきた結果、今では、8町歩(約24,000坪)ほどの田んぼを1人で切り盛りするほどに至っています。

 

■土の力を引き出す

深く耕すし、根がしっかりはる環境を作ります
深く耕すし、根がしっかりはる環境を作ります

人生の大半をお米作りに費やしてきた根本さん。その根本さんが作るお米を食べて「このお米じゃなきゃだめだ」といって購入し続けているお客様が50人ほどいます。そんな「指名買い」が発生する根本さんのお米作りの特徴は「稲のとって良い環境を作ること」です。

 

まず、稲が根を張りやすく、地中環境も良くなるよう田んぼはあえて深く耕すそうです。

 

「トラクターは重いから田んぼには踏圧(とうあつ)がかかって、稲が根を張る作土層(さくどそう)に硬盤(こうばん)という硬い層ができちゃうんだ。そうすると稲の根が深く伸びないんだよ。だから、普通は表面の土をかき回すぐらいなんだけど、うちはこの硬盤を壊すように深く耕すんだよね。細かくやらずごろごろと砕く感じかな。すると、地中に空気も入るし、土も乾いて好気性の微生物が活発になるし、何より根張りも良くなって、強い稲が育つんだ」

 

これは、「奇跡のりんご」や「自然栽培」で有名な青森のりんご農家の木村さんと同じやり方です。お聞きしていると、特に影響を受けたのではなく、今までの経験で判断してやっているそうです。

 

また、稲にあった適切な管理が大切といいます。

頭を垂れる稲穂、実りの有り難さを感じます
頭を垂れる稲穂、実りの有り難さを感じます

「特別なことをしているつもりは無いけど、あえて言うなら適切な管理かな。一番は気候に合わせること。普通は、去年のこの日に田植えをしたから今年もこの日にやる、っていう具合で日にちで農作業を決めちゃう。みんな米ばっかりやっているわけじゃないから、どうしてもスケジュールありきになっちゃう。でも、自分は専業農家だから、他人の田んぼを手伝った後に自分の田んぼをやるんだ。田植えもゴールデンウイークでなくても大丈夫。5月中~下旬の水が暖まっている時に田植えをすると、水が冷たい時に比べて根の活着が違うんだ。だから、田植えが周りより1~2週間遅くてもすぐに追いついちゃうんだよ。あとは、米の状態を見て、11枚の田んぼごとにミネラルの撒く量を決めたり、様子をみながらだね」

 

大きな面積で1枚1枚の田んぼにあわせて作業を変えるのは物凄く手間がかかるはずです。しかし、根本さんはあまり大変ではないといいます。幼少の頃から思い描いていた自分の田んぼが出来ることの喜び、そして、慣れ親しんだ農作業だからなのでしょうね。

 

「そもそも土は力を持っているんだ。だからその力を引き出してあげる環境を作ってあげるだけでいいんだ。子育てと同じだね」

 

こんな思いをもって作っているから、根本さのお米はモチモチしていて甘みがあって、「うん、確かに!美味い!」。味噌作り教室を開催した時に根本さんのお米でおにぎりを作ったところ、参加した子供も大人もみんなが「美味しい~♪」といってバクバクと物凄い勢いで食べていましたよ♪

 

■地域を耕し、人を育む

体験を通じてのみ子供には伝わる事があります
体験を通じてのみ子供には伝わる事があります

専業農家になってからは、根本さんは農家として田畑を耕すだけでなく、「耕育(こういく)」という言葉を掲げ、地域の活性化の活動にも力を入れています。「耕育」とは、「田畑を耕し地域の文化を守り受け継いでいく活動は、地域の将来を担う子供たちを育むことにも繋がる」という根本さん独自の考え方です。

 

例えば、近くの小学校の家庭教育学級の講師として、子供達に地域で作物を育てる楽しさを教えています。1年生とは一緒に丹波の黒大豆を育て、その黒大豆で味噌作りをします。5年生とはお米作りや餅つき大会をしたり、直売所で作った作物を販売する体験の場を提供しています。また、1年生が作った「丹波黒大豆」と5年生が作った「もち米」、地域のみんなで作った「そばの実」を材料に「おこわ」を作り全校で食べるなど、「食育」を推進しています。

 

その他にも、放課後子供教室の講師として鬼ごっこや昔の遊びを教えたり、そば打ちを教えたり。自分が住む小浮地区の活動としては、子供会で地域のおじいちゃん、おばあちゃんと子供達を結びつけて田植え活動を推進したり、環境保全活動として草刈や畦に芝桜を植栽する活動をしたり、遊休地でそばをみんなで作り、地区に住むみんなで年越しそばを食べる場を作ったり。さらには、消防団の班長としては、団員の有志と一緒に子供の減少により廃れていた伝統文化の祇園祭を8年ぶりに復活をさせました。

自分で収穫したからこそわかる事があります
自分で収穫したからこそわかる事があります

農作業で日々忙しいはずなのに、どうしてここまで地域の活動に力を入れるのか?それは根本さんの「農業と地域」に対する熱い思いがあるからです。

 

「本来の農業は、農薬や化学肥料に頼らず地域にあるものを活用して土作りを行う、『持続可能』な農業なんだよね。同じように先人から伝わってき知恵、地域の歴史や文化、環境も、親から子へ繋げていく『継続的』なものじゃなければいけない。だから、土作り、米作りの経験を活かして、苦労や自然への感謝を出来る人づくりをし、育った人がまた土作りに繋がるようにする、それが目標なんだ」

 

きれいな水、懐かしい田園風景、里山の緑、楽しい思い出。地域から巣立っていった人々が思い出せる地域、帰れる「ふるさと」をつくりたいと言う根本さん。 

 

この地域の子供達は根本さんを慕い、一緒に農作業を行ってきました。大地や青空、そして地域の大人たちに育まれたという記憶、そして自分で大豆やお米を育てたという「原体験」は、きっと子供を健やかで心豊かな大人に育てるでしょう。そして、子供達が大人になった時、心の中にある「ふるさと」は、何かあったときにも立ち戻れる「原点」になると思います。

 

■田畑や自然を満喫できる「田舎たっぷり体験教室!」

根本さんと出会って、「そんな体験を私の子供にもさせたい!そしてこういった体験の場に関心がある多くの人と繋げたい!」という思いが強く沸きました。

 

そして半年間近く意見を交わしながら、「田舎たっぷり体験教室!」を開催することに決まりました! 

おばあちゃんと一緒に納豆も稲ワラで作ろう!
おばあちゃんと一緒に納豆も稲ワラで作ろう!

自分でお米や大豆、そば、味噌などを作ってみたい方!

農家さんとご縁を作りたい方。青空と大地を思いっきり味わい方!

 

根本さんと一緒に、田んぼや野菜作り、一緒にやってみませんか?

もちろん、農薬や化学肥料は一切使いません♪

 

特に、子供は大人が思っている以上に、自然体験や農作業が好きなんですよ。最初は恐る恐るでも、10分もしたら、泥まみれになって遊んでいますよ!

親は子供のためにそういった体験ができる場を提供する必要がありますからね。

 

田んぼだけでなく、トマト、きゅうり、ナスといった夏野菜も育てて収穫したり、そば打ちや餅つきをやったり、漬物名人の根本さんのおばあちゃんから漬物の秘訣を教わったり、楽しいことをたっくさんやることになっています。

 

みんなで土に触れ、作物を育てた経験は、人として大切なものを生み出すはずです。そして一緒に農作業をした人はみ~んな仲間です!

おばあちゃんと一緒に田植え!
おばあちゃんと一緒に田植え!

田舎の農家さんと一緒に親戚のような関係を築きましよう!田んぼも、畑も、青空も太陽も、あなたを待っています!

 

子供にとっても、大人にとっても、どの年代にとっても、お米や野菜ができる田畑に直接触れること、そして、作った作物でご飯を作り、餅をつき、そばを打ち、味噌を作るといった経験を1年を通して満喫できる、そんな時間は今しか味わえません!

 

こんなに身近に田舎が満喫できる場があるのだから、足を運ばないともったいない!

 

単にお金を出して食べ物を買う消費者じゃつまらない!

 

四季折々の季節を感じながら、田舎のおばあちゃん、農家さんと一緒に時間を過ごしましょう!

 

★根本さんは、成田市から農業経営改善計画の認定を受けた『認定農業者』です。

★2021年度 農協の千葉県全体の食味コンテストで「千葉県知事賞」=「№1の美味しさ」を受賞しました。

順序よく、真っ直ぐ植えられるか!?
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1粒万倍、お米が育つ姿は美しくもあります
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みんなで稲刈り
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天日干し(おだがけ)の日本の原風景
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丹波黒大豆をみんなで収穫
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自分で作ったもち米でもち突き♪
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